瀬名秀明氏の初短編集だそうです。『八月の博物館』以来約8年ぶりに読んでいますので、どう変わっただろうという気持ち半分です。収録されているのは次の7作品。
- 魔法
- 静かな恋の物語
- ロボ
- For a breath I tarry
- 鶫とひばり
- 光の栞
- 希望
私の印象では、氏の作品に対して小説というよりも技術書のようなイメージを抱いています。このイメージはデビュー作の『パラサイト・イヴ』と次作品の『BRAIN VALLEY』から来ているのでしょう。『パラサイト・イヴ』は自身の専門分野が物語の中心にあるということで誤魔化しをしたくなかったのかと思いましたが、『BRAIN VALLEY』でも脳科学・人工知能・臨死体験など徹底的な調査をすることで専門的なデータを下地とした作品に仕上げていました。『八月の博物館』では博物学やエジプト考古学と、文系に変ガラッとわりましたがその徹底した情報収集は健在。
『パラサイト・イヴ』と『BRAIN VALLEY』しか読んだことがないと、氏の小説は専門情報が多すぎて入りづらいと感じるかもしれません。でも、今回の『希望』についてはかなり抑えられているように思えます。私個人としては『ガモフ全集』のようなタイプは望むところかのですが、一般向けではなく読者が絞られてしまう。その点では『希望』は大丈夫そうです。